バードに会えないまま、17才を迎え私は男の子を出産致しました。
バードによく似た銀髪碧眼の男の子です。
子供を抱え、お父様は私達親子を勘当しました。孫を無くすのは辛かったろうと思います。侯爵家は親戚から養子を取るのでしょう。
私も平民になりました。
バードの凄さがわかります。
商家の次男ですが、ほぼ家を継ぐような能力を持っているようですし、社交界でも多くの令嬢から秋波を送られているようです。ダンスも素晴らしかった。
この子を育てなくてはならない。
幸い、私は住み込みで働けるところ“SI亭”を見つけた。昼間は普通の食事処だが、夜は居酒屋というスタイルの店だ。住み込みなので、ライク(男の子の名前)が泣いてもどうにかなる。お客さんもライクを可愛がってくれるので、非常に助かる。
「俺が噂できいたんだけどよぉ、あのでっかい商家次男が継いだって話!長男を押しのけて次男かよ?って感じ。よっぽど次男の腕がいいんだろうな」
「ああ、あそこの商家で取り扱ってるものに変なものはないからな。ほら、きちんと保証書とかついてるし」
ライクが泣き出す。
「ああ、ごめんよ?つまらない話でちたね?おいたん達の話」
泣き出したので、おむつの交換か母乳だ。
貴族なら絶対母乳で育てることはないのだが、母乳が経済的なのだ。
両方だった…。
流石に食事処でオムツ交換と授乳はできないので、一度部屋に戻らせてもらった。
「あなたのお父さんはすごい人なんですよ?」
と言い聞かせながら私はオムツを交換し、授乳した。
ライクも3才になった。私は20才。子供が年を取るのは早いと思う。
「いらっちゃいまちぇ」
「あ~、ライクが迎えてくれるなら、オジサン毎日でも通うよ~」
おっさんが幼児にメロメロだ。男の子だけど、顔立ちもスッキリ整ってるし、髪も伸ばして後ろで縛っているから、女の子によく間違えられる。
「あはは、ライクは看板坊主だねぇ」
というのは、私をここで雇ってくれた恩人の女将さん。
「人間、話したくない事の一つや二つあるもんだ」と豪気にも私のことをあまり詮索せずに雇ってくれた大恩人だ。
「いらっちゃいまちぇ」
と、ライクが迎えたのはバードその人だった。二人は驚くほど似ていた。
「リラ嬢はいるかい?私のオーダーはリラ嬢だ」
23才であろうバードが私を所望だ。泣きそうだ。
久しぶりに見たバードは少し疲れているようだった。
「私ならここに。ライクはお留守番ね。できるいい子かな?」
「ライクはできるもん!」
と、ライクは頬を膨らませた。
「今更何の用かしら?」
「今までかかってしまったんだ。ゴメン。君があの家を勘当されたことも知っていた。あの子はライクって言うんだね。俺の子供の頃にそっくりだよ(笑)。あそこで働けるように手配したのも俺なんだ」
なんだ。自分ひとりで頑張った気でいたけど、バードが支えていてくれたのか。なんだかちょっと胸がポカポカした。
「できるなら、親子3人で暮らしたい」
そうだと思った。会った時から。二人は似すぎてるほど似ていたし。
「少しずつライクがバードに懐くといいんだけど…」
今の私は、一気に大きな商家に嫁ぐのは何だか気が引ける。
とりあえず、店に戻ってライクとも会っていいだろうか?
バードと二人、店の方に戻った。
「いらっちゃいまちぇって、おかあたんと…だれ?」
「あなたの大事な人よ」
「ふーん」
訝し気にバードの事見てるなぁ。多分さっき二人で出かけたから、ちょっと不貞腐れてるのかな?
「お留守番、上手にできた?」
「おう、ライクの留守番は最高だったぜ!」
「おいたんじゃなくて、ぼくがこたえるんだもん!」
後でこっそり聞いた。心細かったらしい。終始涙目だったという話だ。
本当に毎日通い、ライクの心を自分の方に向けようとしているのがわかった。
ライクに「あの人はあなたのお父さんよ」と言えば変わるのかな?
仕事も終わって、二人の部屋に戻った時に私はライクに告げた。
「ライク、いつも店にきてくれる銀髪で青い眼の男の人、あなたのお父さんなのよ」
ライクなりにショックだったようだ。
今までどう接してた?これからどう接したらいい?突然言われても困る?等たくさんたくさん考えているみたいだった。
翌日はライクが知恵熱を出してしまった。私は言わない方が良かったか悩んでしまった。
「ごめんなさい。あなたのこと、ライクに言ったら考え込んで知恵熱みたい」
「そうなのか…。子供は難しいなぁ。そうだ!今度二人でうちの商家に遊びに来ないか?遊びに来るだけだ。いや、本当に欲しかったら買ってやるのも吝(やぶさ)かではないんだけど…」
「そうね、一度お邪魔してみようかしら?ライクにも言っておく」
バードは嬉しそうな顔してたけど、なんか疲れた様子だった。どうしたのかな?
仕事の休み時間にちゃんと寝てるかな?オデコのタオルも交換してあげなきゃと二人の部屋に行った。
「おかあたん、ずっと二人で暮らしていくのがいいよぉ」
そっかぁ。それがこの子の出した答えなんだ。
「うん、そういう風に伝えるよ。それとは別にね、ライクのお父さんが、お父さんが働く商家に来てみないか?って。ただ遊びに行くだけよ?」
「…遊びに行くだけなら」
バード、これはなかなか手強いよ?どうするんだろう?
翌朝、この家ならよくあることなのかもしれない。4頭立ての豪奢な馬車と馬のいななきが家中に響いた。流石にライクもバードも起きた。「とうたん、かあたん、なんのおと?」ライクが戸惑うのも当然だろう。今までそんな音とは無縁の生活をしてきたのだから。「噂では聞いていたんだが…。君たちを悲しませるような事は絶対にしたくないんだ。あの音は多分公爵」あっ、昔調べたんだった。バードは公爵の落胤って。公爵家に何かあったのかしら?「籍は入れていないが、君は私の妻だ。それが事実だ。」改めて言われると恥ずかしい。バードが出迎えることとなった。「公爵様、いらっしゃいませ。我が家にどんな用件で?我が商家ならばどんな品でも取り扱っています」「うむ、心意気やよし!さすが我が公爵家の跡取り!」「何かの間違いでは?」「なに、その銀髪と青い眼が何よりの証拠!平民にはいないだろう?」「恐れながら、公爵家には後継様がいらっしゃったと思いますが?」「不慮の事故でなぁ…」(本当は横領の罪で勘当したハズ)「私は今の暮らしが好きです。満足しております。跡継ぎでしたら他をあたってください」「公爵の力をもってすれば商家の一つくらい潰せるんだが?」「できないはずですよ。この商家でしか扱っていないものが多すぎて。ここを潰すと国が潰れるんです。公爵様の賢明な判断を。では失礼します」「全く、朝から不愉快だよなぁ。まぁ、そのために奔走してたんだけど?」疲れて見えたのはそのせいなんだ…。「バードが公爵様の跡継ぎってのは?」「多分、本当なんだろうね。ほら、ディスプが言ってただろ?母親が別嬪だったんだよ。公爵邸で使用人してた時のお手つきだろうね」子供(ライク)の前なので、ぼかした会話になった。「本当にこの商家を潰すと国が立ち行かなくなる?」「あぁ、うちは日用品も扱ってるけど、軍関係とかも扱ってるからね。しかも独占状態で」本当にすごい人なんだなぁ。と思う。「あぁ、貴族の奥様が好きな化粧品とか美容系も独占状態だ。ここ潰したら、家庭内戦争勃発だなぁ(笑)」貴族は面倒だと思う。そうか、そういう角度からも攻めたのか。「とうたん、だいちょうびゅ?」「ああ、俺もみーんな大丈夫だ。ライクは心配しなくていいぞ!」公爵は別の角度から攻め込んだ。“SI亭”を買収しようとした。つまり、私とライ
翌週、バードの商家に招待されるように遊びに行った。なんだろう?敵意みたいなものを感じる。「ライク、迷子にならないように手をつなごう!」「うん♪」本当にバードはすごいなぁ。この商家はなんでも扱ってるんじゃないだろうか?扱ってないものあるの?「ようこそ。リラ、ライク。本当に欲しいものがあったら言ってね。必要とあれば、ね?」ね?何?怖いんだけど?もし私が宝石欲しいって言っても、OKでそう。怖いわ~。昔ならそんなことなかったなぁ。何?いきなりバードが目の前を覆う。というか、私とライクを覆う。「誰だ?吹き矢なんて古風な事したのは?」バードが怒っている。その手がちょっと痺れているようだ。「誰か、バードを!手が痺れてるみたい。吹き矢に毒でも塗られてたのかしら?」私は、バードの背中から矢を抜き、救護室へ向かうバードと共に救護室に持っていった。私とライクも救護室に行った。「あーこれ、吹き矢に毒だな。古い手だ。で、犯人捕まえたんだろ?」というのは、救護室の主任。 「解毒剤があるはずだから、至急持って来て」主任はのん気にテキパキしてるなぁ。「意識ははっきりしてるな?」主任はテキパキ処置をしていく。ライクは泣きそうだ。「で、犯人は?」バードは意識もはっきりしてるみたいでよかった。で、そこ聞くんだ?「笑えるぞ?お前の家族を狙ったんだと。ここには解毒剤が沢山あるし、吹き矢なんて古風な手を使うとはねぇ」笑えないんですけど。ここに入った途端に感じた殺気の答えか…。「それなんですけど、ライクがずっと二人で暮らしたいって」私は、ライクが一生懸命出した答えをバードに伝えた。バードはショックだろうか?「おかあたんちがうの!おとうたんがいなくなるのはいやだとおもったから、たぶんちがうの!」バードが毒を受けたって聞いて、ずっと震えてたもんね。「ライク、ゆっくりでいいの。話してごらん?」「うん。おとうたんとしぇいかつするのやじゃないよ。でもきゅうにかわるのはこまる。じょうれんのおいたんもいるし、おかみたんだってはなれたくないよ!」ライクが涙目で一生懸命話してくれた。「うんうん、わかったよ。それじゃあさ。お店がお休みの日だけココに来るっていうのはどうかな?」バードの提案。恐らく、ライクの年齢が上がるにつれてココに来る率が上がるのだろう。「うん、わ
バードに会えないまま、17才を迎え私は男の子を出産致しました。バードによく似た銀髪碧眼の男の子です。子供を抱え、お父様は私達親子を勘当しました。孫を無くすのは辛かったろうと思います。侯爵家は親戚から養子を取るのでしょう。私も平民になりました。バードの凄さがわかります。商家の次男ですが、ほぼ家を継ぐような能力を持っているようですし、社交界でも多くの令嬢から秋波を送られているようです。ダンスも素晴らしかった。この子を育てなくてはならない。幸い、私は住み込みで働けるところ“SI亭”を見つけた。昼間は普通の食事処だが、夜は居酒屋というスタイルの店だ。住み込みなので、ライク(男の子の名前)が泣いてもどうにかなる。お客さんもライクを可愛がってくれるので、非常に助かる。「俺が噂できいたんだけどよぉ、あのでっかい商家次男が継いだって話!長男を押しのけて次男かよ?って感じ。よっぽど次男の腕がいいんだろうな」「ああ、あそこの商家で取り扱ってるものに変なものはないからな。ほら、きちんと保証書とかついてるし」ライクが泣き出す。「ああ、ごめんよ?つまらない話でちたね?おいたん達の話」泣き出したので、おむつの交換か母乳だ。貴族なら絶対母乳で育てることはないのだが、母乳が経済的なのだ。両方だった…。流石に食事処でオムツ交換と授乳はできないので、一度部屋に戻らせてもらった。「あなたのお父さんはすごい人なんですよ?」と言い聞かせながら私はオムツを交換し、授乳した。ライクも3才になった。私は20才。子供が年を取るのは早いと思う。「いらっちゃいまちぇ」「あ~、ライクが迎えてくれるなら、オジサン毎日でも通うよ~」おっさんが幼児にメロメロだ。男の子だけど、顔立ちもスッキリ整ってるし、髪も伸ばして後ろで縛っているから、女の子によく間違えられる。「あはは、ライクは看板坊主だねぇ」というのは、私をここで雇ってくれた恩人の女将さん。「人間、話したくない事の一つや二つあるもんだ」と豪気にも私のことをあまり詮索せずに雇ってくれた大恩人だ。「いらっちゃいまちぇ」と、ライクが迎えたのはバードその人だった。二人は驚くほど似ていた。「リラ嬢はいるかい?私のオーダーはリラ嬢だ」23才であろうバードが私を所望だ。泣きそうだ。久しぶりに見たバードは少し疲れているようだった。
わたくしももう12才です。我が家は由緒正しい侯爵家。見合いの釣り書の10や20くらいきているでしょう。「この家はうちよりも爵位が低いじゃない?ダメよ!」「え?なんでこんなに背が低いの?ダメよー」「えー、この人は顔が…ハッキリ言うとブサイクではなくて?」「この人。この間のお茶会でプレイボーイだと噂になっている方ね」等、あら捜しをしているんだろうかというくらい断りまくっていた。その結果数年後、「お嬢様、大変言いにくいのですが。お嬢様に見合いの釣り書が来ていないのです!」「何ですって?!」おかしいわ。わたくしは付近を捜索した。わたくしは自分で言うのも烏滸がましいですけれども、由緒正しい侯爵家の一人娘。蝶よ花よと育てられましたわ。わたくしの何が不満なの?「釣り書、あるにはあるのですが…お嬢様、平民はお嫌いでしょう?」「当たり前のことを何を?」「平民なのですが、急成長の商家の息子でして…」ふーん、平民にしてはマシな方ね「わたくしはこの家の一人娘ですからその方は婿入り、という事になりますわね。平民風情が一気に侯爵?!なんか気に入らないわね」「しかし、釣り書はこの一つでして…」「しかたない。会って差し上げましょうか?ほほほ」わたくしはこの決断がわたくしの人生を大きく変えることになるとは思ってもみなかった。「初めまして、お嬢様。私の名前はバードと申します。商人は平民ですので、家名はありません。どうぞ気軽にバードとお呼びください」なんなの?18才年齢のわりに、しっかりとしててイケメンじゃない?今後さらにイケメンになるのかしら。声もさらにイイ感じになるのかしら?肩幅とかもガッチリとしていい感じになりそう。今後が楽しみな人材ね。碧眼に銀髪。あれ?銀髪って平民に少ないんじゃ?「わたくしはリラ=ステインベルク侯爵令嬢よ。知ってるでしょ?」「未来の奥方の名前はしっかりと覚えていますよ。リラ嬢」わたくしはこっそりとバードの素性を探るように指示を出した。執事などは「バード様をお気に召したのですね~」などと感涙していたが、違う。どうも、碧眼に銀髪の平民というのが引っかかる。「お嬢様、調べた結果とんでもないことがわかりました。どうやら、バード様は公爵家の落胤のようです」公爵家と言えば…王家ともつながりあるじゃない。バードは超優良
俺はこのライレルク王国の第一王子だ。間違いない!しかしだ!最近自分こそが第一王子という輩が現れた。なんか、嬰児取り換え?生まれてすぐの子を取り換えるの?で、侍女の子と取り換えたから侍女の子として育った自分こそが正統な血筋の子である。という話だ。ふむふむ、なるほど。証拠はあるんだよね?で、証拠があったようで、俺は突然ビューティフル王宮ライフから平民ライフになった。名前はラルクと申します。幸いなのは、幼馴染で乳母の子のニースが共に来てくれたことだ。だって、俺自慢じゃないけど料理できないし?ニースも微妙だけど、俺よりマシだろう。騎士としても仕えてくれていたし(今は参謀)、きっと野戦料理みたいなのはできるはず!「ラルク様!今後はどのようにするつもりですか?」「うーん、俺はあのポッと出の王子に王子が務まるとは思ってないんだよね?そのうちそっちはどうにかなるとして…。俺らでしょ?俺には高位貴族と交流があったという人脈がある。外交も俺がしていたからそっちの人脈もある。…とすればやることは一つでしょう?商人です!そうだな、ゆくゆくは国一番の商会にでもなります?」「野望は大きい方がいいです。それにしても、ラルク様の言う通りですね。人脈は多いですね。そして、あの王子には‘王子’という役職は務まりそうもないですね。大方イメージで王子は楽して贅沢をしている…みたいに思ったんでしょうね。山のような書類に追われて、きちんとした食事などなかなか摂れないのに…」「その山のような書類を俺にあてがっていたのはお前だ!」「御意」「そのおかげでか(?)商会のようなところの書類など簡単に処理できるだろうな」「まずは俺は商会を起ち上げようと思う。名前は安易に『ラルク商会』でいいだろう」安易だとは思うがわかりやすいし。「では、まずは商会の特産ですね。ラルク様の人脈をもって東方の国特産のアキヤ貝から採れるというあの石を商会の目玉にするのは?貴族がこぞって欲しがるでしょうね。そこが王に追い出された王子の商会だとしても…」「そうだな。アレはどこにも卸していないんだよな。この商会で独占できれば…というか、するぞ!まずは俺は東方の国に文を出す。もちろん東方の国の言語で。相手に失礼では商談に支障が出てしまう。今後の事業についても要相談だな」ニースはすぐに書面を東方の国に送ってくれ、数日